概要
簡易水洗トイレは、通常の水洗トイレと構造が似ていますが、水をタンクからではなく利用者が直接注ぐ点で異なります。水封(ウォーターシール)が備わっており、臭気やハエが逆流するのを防ぎます。排泄後に約2〜3Lの水を注ぐことで洗浄でき、座るタイプとしゃがむタイプの両方があります。

出典:Eawag:https://www.eawag.ch/en/department/sandec/publications/compendium/
仕組み
便器の底にはカーブした水封が設けられ、これにより下水やピットからの臭気・害虫を遮断します。利用者はバケツや水差しで水を注ぎ、排泄物を水封の上へ押し流します。水を高い位置から注ぐと、より効果的に排泄物を流すことができます。水封の深さはおよそ2cmが最適とされ、直径は約7cmが推奨されています。
入力と出力
- 入力:糞便、尿、洗浄水、(肛門洗浄用水)、(トイレットペーパーや拭き取り材)
- 出力:ブラックウォーター
適用条件
簡易水洗トイレは、座るタイプ・しゃがむタイプのいずれにも対応でき、拭き取りや水洗浄の習慣にも適しています。ただし、常に水源が確保されていることが前提条件です。通常の水洗トイレより使用水量が少ない一方で、流量が少ないために詰まりやすく、維持管理が重要になります。公共施設、家庭のいずれでも利用可能です。
適用可能なシステム
- システム1
- システム3
- システム5
- システム6
- システム7
- システム8
長所と短所
長所
- 水封により臭気やハエを防ぐことができる
- 使用後すぐに排泄物が流されるため清潔で快適である
- 座るタイプとしゃがむタイプの両方に対応可能
- 水で洗浄する習慣にも、紙で拭き取る習慣にも適合する
- 設置コストが低く、運用コストは水の価格に依存する
短所
- 常時利用可能な水源が必要である(雨水や再利用水も可)
- 製造に必要な材料や技能がどこでも入手できるとは限らない
- 粗い紙などを流すと詰まりやすい
設計・運用上のポイント
- 水封は25°以上の傾斜を持たせ、プラスチックや陶器で作るのが望ましい(粗いコンクリートでは詰まりやすく清掃もしづらい)
- 水封の深さは約2cmとし、最小限の水で流せるよう設計する
- 定期的な清掃を行い、衛生状態を保つことが重要である
- トイレットペーパーや月経衛生用品などの乾燥した拭き取り材は別途回収し、トイレに流さないようにする
- 機械的な部品がないため故障は少ないが、詰まり防止のための維持管理が必要である
まとめ
簡易水洗トイレは、水を直接注いで使用するシンプルな構造のトイレです。水封により臭気やハエを防ぎ、利用者にとって清潔で快適です。水源が必要という制約はありますが、適切な設計と運用によって公共・家庭の両方で広く受け入れられる技術です。
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