S.1 尿貯留タンク/容器(Urine Storage Tank / Container)

左側には尿の貯留に使われている20リットルの黄色いジェリ缶が地面に埋め込まれて設置されている様子。右側には尿を保存している透明なプラスチック容器が屋外に置かれている様子が写っている。 収集・ 貯留・処理

概要

尿がすぐに利用できない場合や、ポリタンク(C.1)などの運搬技術で即時に移送できない場合には、現地で容器やタンクに貯留することができます。タンクは後に移動させるか、別の容器へ移し替えて運搬します。尿貯留タンクは、利用者数や衛生化のために必要な貯留期間に応じて適切な容量で設計される必要があります。尿は少なくとも1か月は貯留すべきであり、詳細な保存条件や施肥方法はWHO(世界保健機関)のガイドラインに従う必要があります。家庭で自家消費用の作物に施肥する場合には、貯留せず直接利用することも可能です。小容量のタンクを家庭や施設で使い、一杯になったら農地など利用地近くにある集中型の大きなタンクへ運搬して集約する場合もあります。

仕組み

尿は密閉タンク内に貯留され、衛生化されます。タンクは日常的な利用量に対応する大きさが必要で、1人あたり1日平均1.2Lの尿が発生します。

移動可能なタンクはプラスチックやガラス繊維製、固定型はコンクリートやプラスチックで作られます。金属製は高pHによる腐食のため適しません。タンク底部には有機汚泥や沈殿物(カルシウム・マグネシウムのリン酸塩)が堆積するため、清掃や排出ができる開口部が必要です。

配管やタンクは換気せず、圧力を均等に保つ必要があります。尿の供給管がトイレや小便器に直結する場合、堆積物が発生しやすいため、配管は短く、1%以上の勾配を持たせ、直角の曲がりを避け、大口径(地下配管では最大110mm)とし、詰まりに備えてアクセスしやすく設置します。

尿を貯めるときは、上からではなく底の方から流入するようにすることが推奨されます。そうすることで尿の飛散や空気の逆流を防ぎ、嫌な臭いの発生を抑え、肥料成分である窒素の損失を防ぐことができます。

入力と出力

  • 入力尿
  • 出力:貯留尿

適用条件

尿貯留タンクは、農業における肥料として尿の栄養素を利用するニーズがある場合に最も適しています。一方で、ニーズがなければ、汚染や悪臭の原因となる可能性があります。タンクはあらゆる環境で設置可能であり、屋内外、地上・地下いずれの設置も可能です。気候や利用可能な土地、土壌条件に応じて設計が調整されます。

適用可能なシステム

  • システム4
  • システム5
  • システム9

健康面・受容性

長期貯留は、化学物質や機械処理を加えずに尿を衛生化する最も有効な方法です。病原体伝播のリスクは低く、6か月以上の長期貯留によりほぼ完全な衛生化が達成されます。

設計・運用上のポイント

  • バキュームカーで汲み取る場合、空気の流入を確保しなければタンクが破損する恐れがある
  • タンク底部に粘性のある汚泥が堆積するため、定期的な排出や清掃が必要
  • 汚泥は通常、タンクを空にする際に同時に排出されるが、タップ排出方式(タンクに付けられた蛇口から尿を排出する方式)では定期的な汚泥除去が必要になる場合がある
  • タンクや配管に沈着する鉱物や塩類は、手作業または酢酸(24%以上)の強酸で溶解除去できる

長所と短所

長所

  • シンプルで頑丈な技術である
  • 地元で入手可能な材料で建設・修理できる
  • 病原体伝播のリスクが低い
  • 貯留尿を肥料として利用できる
  • 必要な土地面積が小さい
  • 自力で排出する場合、運用コストがほとんどかからない

短所

  • タンクを開けたり排出すると軽度から強い臭気が発生する
  • 規模や材質によっては建設コストが高い
  • タンク容量によっては頻繁な排出が必要になる

まとめ

尿貯留タンク/容器は、尿を安全に貯留・衛生化し、肥料として利用できるシンプルで実用的な技術です。設置環境を選ばず適用可能であり、農業利用に適した栄養供給源となります。定期的な清掃や排出が必要ですが、適切に管理すれば低コストで持続的に利用可能な技術です。

コメント