概要
ポリタンクは軽量で持ち運びやすいプラスチック製の容器で、密閉することで尿を安全に貯留・輸送できます。尿は直接ポリタンクに収集することも、尿貯留タンク/容器(S.1)から移し替えて農地や集中型貯留施設まで運搬することも可能です。尿分離システムが普及している地域では、自転車や家畜、荷車、小型トラックなどを使い、ポリタンクの収集・運搬を専門とする小規模事業が成立する場合もあります。

仕組み
1人あたり1日平均1.2Lの尿が発生しますが、気候や水分摂取量により変動します。5人家族の場合、20Lのポリタンクはおよそ3〜4日で満杯になります。尿は現地で一時的に保管するか、そのまま運搬することができます。
トイレや小便器とパイプで直結する場合は、配管内で沈殿物が堆積しやすいため、配管を短く、勾配を1%以上に保ち、直角の曲がりを避け、大口径で設計する必要があります。詰まりに備えてアクセスしやすい配置にすることも重要です。
ポリタンクはすぐに満杯になるため頻繁に交換や排出が必要です。そのため、尿をまず大きな貯留タンクに貯め、そこから小型ポンプなどでポリタンクに移し替えて農地まで運搬する方法もあります。
入力と出力
- 入力:尿
- 出力:貯留尿
適用条件
ポリタンクは、尿の発生場所(家庭など)と利用場所(農地など)が近距離にあり、少量の尿を取り扱う場合に適しています。安価で清掃も容易、再利用可能なため短距離輸送に有効です。大量の尿や長距離輸送には、より効率的な収集・輸送システム(例:C.3 機械による汲み取り・輸送)が適しています。
寒冷環境でも使用可能ですが、尿が凍結して膨張することを防ぐために、ポリタンクを完全に満杯にせずに使用する必要があります。暖かい季節には、農業利用のために必要に応じて尿を使うことができます。
適用可能なシステム
- システム4
- システム5
- システム9
健康面・受容性
尿は通常無菌であるため、ポリタンクを交換・排出する作業は健康リスクが低いとされています。密閉性が高いため運搬時のリスクも小さいです。作業は必ずしも快適ではありませんが、ピットの汲み取りに比べれば利便性が高く、低コストです。
一部地域では尿に経済的価値があり、家庭から無償で収集されることもあります。家庭が自ら尿を運搬して利用すれば、農業生産が増え、栄養改善や収入向上につながる場合もあります。
設計・運用上のポイント
- 細菌繁殖や汚泥堆積、悪臭を防ぐため、ポリタンクは頻繁に洗浄する必要がある
- 安全上の理由や運搬の困難さから、尿以外の液体(ブラックウォーターやグレーウォーター)を混入させない
長所と短所
長所
- 広く入手可能で頑丈である
- 設置・運用コストが非常に低い
- 雇用や収入源を生み出す可能性がある
- 清掃が容易で再利用可能である
- 病原体伝播のリスクが低い
短所
- 運搬時に重くなる
- こぼれる可能性がある
- 充填や排出時に臭気が発生する場合がある(貯留条件による)
まとめ
ポリタンクは、短距離かつ少量の尿を運搬する際に有効で、安価で実用的な技術です。密閉性が高く健康リスクも低いため、多くの環境で利用可能です。ただし頻繁な交換や運搬が必要で、大量処理や長距離輸送には適していません。適切に管理すれば、農業利用に向けたシンプルかつ持続可能な手段となります。
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