概要
換気改良型二槽式ピット(二層式VIP)は、換気改良型単槽式ピット(S.3)を改良した技術で、2つのピットを交互に使用できる構造が特徴です。片方のピットを使用している間に、もう一方は休止させることで水分が抜け、体積が減少し、有機物が分解されます。休止期間は1〜2年以上と長く、その間に内容物はある程度衛生化され、腐植土のような状態になるため、後に安全かつ容易に掘り出すことができます。

出典:Eawag:https://www.eawag.ch/en/department/sandec/publications/compendium/
仕組み
使用するピットが満杯に近づいたら(上端から50cm程度)、そのピットを覆って密閉し、もう一方を使用します。密閉することで、雨水やごみ、動物、人が落ちるのを防ぎます。
上部構造(トイレの個室部分)は、最初から二つのピットを同時に覆うように設計する方法と、片方のピットからもう片方へ移動できるように設計する方法があります。換気は、1本の換気管を移動させて利用する方法、または各ピットに専用の換気管を設ける方法のいずれでも可能です。
この交互利用により、一方のピットでは休止中に内容物が腐植土化するため、液状の汚泥のように吸引する必要がなく、手作業で掘り出すことが可能になります。
入力と出力
適用条件
換気改良型二槽式ピットは、人口密度が高めの都市周縁部に適しています。バキュームカーによる吸引を必要とせず、腐植土状になった内容物を掘り出すだけでよいため、密集地でも運用可能です。ただし、2つのピットは必ず順番に使用することが前提であり、使用していないピットはしっかりと密閉しておく必要があります。
水資源が乏しく地下水位が低い地域で特に有効であり、十分な通風を確保できる立地が望まれます。一方で、掘削が難しい硬い地盤や洪水の多い地域には不向きです。
適用可能なシステム
- システム2
健康面・受容性
換気改良型二槽式ピットは、換気による臭気やハエの抑制効果が高く、非常に清潔で快適に利用できます。水洗トイレよりも受け入れられやすい場合もあります。ただし、以下の健康リスクは残ります。
- 浸出液による地下水汚染
- 洪水時の溢れや崩壊のリスク
- 換気があってもハエの発生リスクを完全には排除できない
設計・運用上のポイント
- 定期的な清掃と点検を行い、施設を清潔に保つ
- 換気管のスクリーンに付着するハエの死骸やクモの巣、埃は除去して通気性を維持する
- 使用していないピットは完全に密閉し、雨水の浸入を防ぐ
- ピットを交互に適切に使用するスケジュール管理が必要
長所と短所
長所
- 単槽式VIPより長寿命で、適切に管理すれば半永久的に利用可能
- 内容物が腐植土化するため、糞便汚泥よりも掘り出しが容易
- 病原体の大幅な減少が期待できる
- 腐植土を土壌改良材として利用可能
- 臭気やハエの発生が非換気式ピットより大幅に軽減される
- 地元で入手可能な材料で建設・修理が可能
短所
- 腐植土の排出は手作業で行う必要がある
- 地下水汚染の可能性がある
- 単槽式VIPより建設コストが高い(ただし自力で堆積物を排出する場合は運用コストは低い)
まとめ
換気改良型二槽式ピットは、単槽式に比べて寿命が長く、臭気やハエの問題を大幅に抑制できる優れた技術です。内容物が休止期間を経て腐植土化するため、手作業での排出が可能となり、農村部や都市周縁部における持続的な衛生改善に役立ちます。ただし、設計や運用のルールを守ることが不可欠です。
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