PRE 前処理技術(Pre-Treatment Technologies)

浄化槽汚泥処理施設のスクリーン部を示す写真。コンクリート製の槽の中に縦方向の金属棒が並んだスクリーンが設置されており、水中のごみや汚泥がスクリーン下部に引っかかっている。背景には配管や手すり、施設の構造物が見える。 準集中処理・集中処理

概要

前処理技術は、排水や汚泥に含まれる油脂、砂、繊維、ごみなどを除去するための初期段階の処理です。これらの物質が搬送管や処理設備に流入すると、詰まりや摩耗を引き起こすおそれがあるため、適切な前処理によってそれらの蓄積を防ぎ、システム全体の耐用年数を延ばすことができます。主な方式は物理的除去であり、代表的な技術としてスクリーン、グリーストラップ、砂利沈殿槽などがあります。これらは搬送設備や処理施設の前段階に設置されます。

仕組み

前処理は、排水の流入時に物理的作用を利用して異物を除去します。

グリーストラップは、油や脂肪を浮上させて分離し、容易に除去できるようにします。流入・流出部の仕切りによって水面の乱流を抑え、油脂を上部に集めます。

スクリーンは、プラスチックや布切れなどの粗大ごみを格子状のスクリーンで捕捉します。間隔は15〜40 mmで、手動または機械的に清掃します。

砂利沈殿槽は、砂などの無機粒子を沈降させて除去します。水平方向式、曝気式、渦流式の3タイプが一般的です。

入力と出力

適用条件

前処理は、搬送・処理設備の詰まりや摩耗を防ぐうえで重要な工程です。

  • グリーストラップ:油や脂肪を多く含む排水を出す家庭、レストラン、産業施設などに適している
  • スクリーン:固形物が混入する可能性のある下水や処理施設の入口に設置する。市場の排水口などではメッシュボックス型のトラッシュトラップも有効
  • 砂利沈殿槽:未舗装道路や雨水が混入する地域で、砂分の堆積や設備の摩耗を防ぐ
  • リントトラップ:ランドリー施設など、繊維くずを多く含む排水を処理する場合に推奨される

適用可能なシステム

  • システム 1
  • システム 6
  • システム 7
  • システム 8
  • システム 9

長所と短所

長所

  • 初期投資および運転コストが比較的低い
  • 後続の搬送・処理設備の機能低下を防げる
  • 設備の寿命と耐久性を向上できる

短所

  • 頻繁な清掃・維持管理が必要
  • 油脂や固形物の除去作業は不快で、住民が自主的に行うのは困難な場合がある

設計・運用上のポイント

前処理設備は定期的な点検と清掃が不可欠です。清掃頻度が低いと、悪臭の発生や下流設備の機能障害につながります。

油脂や固形物の除去は専門業者に依頼するのが望ましいですが、費用がかかります。作業者は病原体や有害物質に触れるおそれがあるため、必ず手袋や長靴などの保護具を着用しなければなりません。

除去した物質は、環境に配慮した方法で固形廃棄物として処分します。回収した油脂は、バイオディーゼル燃料の製造などに再利用できます。

まとめ

前処理技術は、下水や汚泥中の油脂・砂・固形物を物理的に除去し、後段の搬送や処理設備を保護する重要な初期工程です。適切な設計と定期的な清掃を行うことで、衛生システム全体の耐久性を高め、長期的な運用コストを低減することができます。

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