概要
曝気池は、機械的曝気装置によって酸素を供給し、水中の好気性微生物と汚水を混合させることで有機物を分解する処理技術です。光合成による酸素供給に依存せず、曝気装置によって酸素を直接供給するため、安定化池(T.5)よりも深い水深で高負荷の排水処理が可能です。
この方式では、有機物分解速度が高く、病原体除去効果も向上します。特に寒冷地や日射が限られる地域でも安定して運転できることが特徴です。

出典:Eawag: https://www.eawag.ch/en/department/sandec/publications/compendium/
仕組み
曝気池は、機械式曝気機(表面曝気機、タービン式、または散気装置など)によって酸素を供給し、池内の水を均一に混合します。これにより、浮遊する好気性微生物が汚水中の有機物を効率よく分解し、BOD(生物化学的酸素要求量)を大幅に低減します。
池の深さは通常2〜5mで、滞留時間は処理目標に応じて3〜20日に設定されます。
池の底には粘土、アスファルト、または圧密土などによる防水ライナーを設け、浸出を防止します。掘削土は池の周囲に盛り上げて堤防を形成し、雨水の流入や侵食を防ぐ構造にします。
曝気によって池内が攪拌されるため、後段に沈殿槽を設けて処理水中の懸濁固形物を分離する必要があります。
入力と出力
適用条件
曝気池は、高濃度の有機性排水や病原体を多く含む排水を効率的に処理することができます。
以下の条件に適しています。
- 電力供給が安定しており、曝気装置の連続運転が可能な場所
- 部品交換・修理に必要な技術者および資材が確保できる地域
- 広い土地が確保でき、住宅や商業施設から離れた場所
- 農村部・都市周辺地域における大規模排水処理施設
- 冷涼地域など、日射に依存しない処理方式が求められる場合
一方、電力供給が不安定な地域では、曝気停止により池が嫌気化し、処理効率が低下する恐れがあります。
適用可能なシステム
- システム 1
- システム 6
- システム 7
- システム 8
- システム 9
長所と短所
長所
- 有機物および病原体の除去効率が高い
- 有機・水理ショックロードへの耐性が高い
- 適切に設計・維持すれば、臭気や昆虫の発生を抑制可能
- 寒冷地や低日射地域でも安定運転が可能
短所
- 電力を継続的に必要とし、エネルギーコストが高い
- 機械曝気装置の故障や停止により処理性能が低下する
- 広い土地が必要で、立地制限がある
- 建設および運転コストが高く、専門技術者による維持管理が必要
- 曝気装置や部品が現地で入手困難な場合がある
- 処理水および汚泥は後段処理が必要
設計・運用上のポイント
- 流入排水はスクリーンなどで粗大ごみを除去し、曝気機の損傷を防ぐ
- 池の深さは2〜5mとし、滞留時間を3〜20日で設計
- 池底には不透水ライナー(粘土、アスファルト、圧密土など)を敷設
- 掘削土で池周囲に堤防(防護盛土)を築き、雨水流入・侵食を防止
- 機械曝気装置は定期的に点検し、スラッジが堆積しすぎないよう2〜5年ごとに除泥
- 危険防止のために、フェンスや標識を設置する
- 池がごみの不法投棄場所とならないように措置を講じる
- 曝気装置の運転停止時は速やかに修復または代替電源で対応
- 保守管理には常勤の熟練スタッフを配置することが望ましい
まとめ
曝気池は、機械的曝気によって高い処理効率を実現する好気性処理技術であり、寒冷地や高濃度排水にも対応できます。その反面、電力依存度が高く、運転コストや維持管理体制の確保が課題です。十分な土地と安定した電源、熟練スタッフを確保できる条件下では、効率的で信頼性の高い中〜大規模処理技術として有効に機能します。
引用・参考資料
アイキャッチ画像:「Aerated pool for waste water treatment at Bantar Gebang, Jakarta – Indonesia」by 22Kartika
ライセンス:CC BY-SA 3.0

コメント