サニテーションシステムとは、利用者インターフェースから処理・利用・処分までの一連の流れを示すものです。
コンペンディウム(Sanitation Systems and Technologies, 第2版)では、さまざまな技術(U / S / C / T / D)を組み合わせて構築されるシステムを整理し、9つの代表的なシステムテンプレートを提示しています。
- システムテンプレートの見方
- 9つの代表的なシステム
- System 1: 単槽ピットシステム(Single Pit System)
- System 2: 無水式ピットシステム(汚泥非生成型, Waterless Pit System without Sludge Production)
- System 3: 簡易水洗ピットシステム(汚泥非生成型, Pour Flush Pit System without Sludge Production)
- System 4: 無水式システム(尿分離型, Waterless System with Urine Diversion)
- System 5: バイオガスシステム(Biogas System)
- System 6: ブラックウォーター浸透処理システム(Blackwater Treatment System with Infiltration)
- System 7: ブラックウォーター処理システム(処理水搬送型, Blackwater Treatment System with Effluent Transport)
- System 8: ブラックウォーター搬送システム(集中/準集中処理施設向け, Blackwater Transport to (Semi-) Centralized Treatment System)
- System 9: 下水道システム(尿分離型, Sewerage System with Urine Diversion)
システムテンプレートの見方

図1:入力が機能グループを経て変換される例
この図は、糞便・尿・洗浄水の3つの入力がどのように処理され、最終的に利用・処分されるかを示した例です。
- 入力 – この例では入力は糞便・尿・洗浄水の3つ
- U (ユーザーインターフェース) – 3つの入力が簡易水洗トイレに入ります。
- 生成物 – この段階でブラックウォーターが生成されます。
- S (収集・貯留・処理) – ブラックウォーターは二槽式ピット(Twin Pits for Pour Flush)に送られます。
- 変換 – ピット内で貯留と自然分解が進み、ピットヒューマス(Pit Humus)へと変換されます。
- C (搬送) – 槽内腐植土は、人力によって汲み取られて輸送されます。
- T (集中処理・準集中処理) – 槽内腐植土は衛生的に安全とみなされるため、ここはスキップされます。
- 追加生成物なし – 新たな生成物は発生しません。
- D (利用・処分) – 最終的に「農業利用(土壌改良材として施用)」または「地表処分・保管」のいずれかで処理されます。
このように、システムテンプレートは「入力がどの機能グループを経て、どのように変換され、最終的にどう利用・処分されるか」を一目で理解できるように設計されています。
👉システムテンプレートの使い方についてはこちらをご覧ください:システムテンプレートの使い方
9つの代表的なシステム
System 1: 単槽ピットシステム(Single Pit System)
もっとも基本的なシステム。単槽ピットに排泄物を蓄積する。
維持管理は比較的容易だが、地下水汚染のリスクがある。
コストが低いため農村部や低所得地域で広く用いられる。
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System 2: 無水式ピットシステム(汚泥非生成型, Waterless Pit System without Sludge Production)
排泄物を乾燥・分解させ、汚泥を生成しないピット方式。
二槽交互使用などにより、槽内腐植土を生成する。
比較的長期にわたって安全に利用できる。
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System 3: 簡易水洗ピットシステム(汚泥非生成型, Pour Flush Pit System without Sludge Production)
少量の水を使ってピットに排泄物を流し込み、汚泥を生成しない方式。
利用者にとって快適性が高く、文化的受容性も良い。
一方で水資源の確保が前提となる。
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System 4: 無水式システム(尿分離型, Waterless System with Urine Diversion)
尿と糞便を分離し、尿は収集・貯留して農業利用、糞便は乾燥処理。
栄養分のリサイクルに優れ、持続可能な衛生システムの代表例。
適切な管理を要するが、資源循環型として注目される。
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System 5: バイオガスシステム(Biogas System)
排泄物をバイオガス反応槽に送り、エネルギーとして活用。
調理燃料や照明用のガスを得られるため、副次的な便益が大きい。
ただし初期投資や維持管理の負担が高い。
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System 6: ブラックウォーター浸透処理システム(Blackwater Treatment System with Infiltration)
水洗トイレなどからのブラックウォーターを浸透処理し、地下に還元。
構造が単純でコストも低いが、土壌条件や地下水位の影響を強く受ける。
都市郊外や農村部の適地で利用可能。
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System 7: ブラックウォーター処理システム(処理水搬送型, Blackwater Treatment System with Effluent Transport)
ブラックウォーターを処理し、処理水を農業利用や排出に回す。
処理施設を組み合わせるため、資源利用と公衆衛生を両立できる。
維持管理体制の確立が成功の鍵となる。
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System 8: ブラックウォーター搬送システム(集中/準集中処理施設向け, Blackwater Transport to (Semi-) Centralized Treatment System)
ブラックウォーターを下水管などで集約し、集中または準集中処理施設に輸送する。
都市規模での処理に適しており、他の廃水管理と統合しやすい。
ただし建設コストとインフラ維持が大きな課題。
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System 9: 下水道システム(尿分離型, Sewerage System with Urine Diversion)
尿を分離しつつ、その他の排水は下水道で処理施設に輸送する。
尿由来の栄養をリサイクルでき、資源循環型の都市システムとなる。
導入には高度な計画と住民の協力が必要。
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