この用語集は、Compendium of Sanitation Systems and Technologies(第2版、以下「コンペンディウム」)に基づいて作成されています。
サニテーションの理解に必要な基礎用語が日本語で整理されています。
用語は アルファベット順(A〜Z) に掲載されており、ページ冒頭と末尾のインデックスから目的の用語にジャンプできます。
各項目には定義のほか、詳細ボタンをクリックすれば関連する機能グループ(U/S/C/T/D)やシステムを確認できます。
A
Anaerobic Treatment(嫌気性処理)
酸素を使わずに微生物が有機物を分解する処理。分解の過程でバイオガスが生成され、これはエネルギーとして利用可能である。病原体除去は限定的である。
Ash(灰)
燃焼残さであり、乾燥や病原体制御に利用される。トイレで尿や糞便に加えて衛生状態を改善する補助材となる。
Anal Cleansing Water(肛門洗浄水)
排泄後に肛門を洗浄するための水。南アジアや中東で広く行われ、排水量に影響する。
Anal Cleansing Material(肛門洗浄用資材)
排泄後の清拭に用いる資材。紙、葉、石、木片など文化に応じて異なる。水に溶けない資材は配管詰まりの原因となる。
B
Biogas(バイオガス)
嫌気性処理によって発生するガスで、主成分はメタンと二酸化炭素。調理や発電に利用可能な再生可能エネルギー。
Biomass(バイオマス)
排水や栄養分を利用して育成される有機物。魚、昆虫、野菜、果実、飼料、燃料などに利用される。活性汚泥や嫌気性汚泥を構成する微生物群の呼称として用いられることもある。
Blackwater(ブラックウォーター)
トイレからの排水で尿と糞便を含む。病原体リスクが高く、適切な処理が不可欠である。
詳細情報
📂 関連する機能グループ
- 収集・貯留・処理
- 搬送
- 集中処理・準集中処理
🛠️ 関連システム
Brownwater(ブラウンウォーター)
尿分離トイレから排出される、糞便と洗浄水を含む排水。栄養分と病原体を含み、処理と安全な利用が必要。
C
Compost(コンポスト)
有機廃棄物を好気的に分解して得られる安定した土壌様資材。肥料や土壌改良材として利用される。
Conveyance(搬送)
トイレや貯留施設から収集した排泄物や汚泥を処理施設に輸送する過程。パイプ輸送や車両輸送が含まれる。
Co-Composting(混合コンポスト化)
汚泥や排泄物を他の有機廃棄物と混合して行うコンポスト化。処理効率や安定性を高める。
D
Digestate(消化液・消化残さ)
嫌気性処理の副産物として得られる液状または半固形物。栄養分を含むが、安定化のため追加処理が望ましい。
Dehydration(脱水)
汚泥や排泄物から水分を除去して体積を減らす処理。天日乾燥床や機械脱水機が利用される。
E
Effluent(排出液、処理水)
処理施設から放出される液体。水質基準を満たさない場合、環境や健康に悪影響を及ぼす可能性がある。
Excreta(排泄物)
尿と糞便を総称したもの。主要な病原体や栄養分を含み、サニテーションの中心的対象である。
詳細情報
📂 関連する機能グループ
- 収集・貯留・処理
- 搬送
- 集中処理・準集中処理
- 利用・処分
🛠️ 関連システム
F
Faeces(糞便)
固形の排泄物であり、多くの病原体を含む。病気の主要な伝播経路の一つである。
Fertilizer(肥料)
植物生育に必要な栄養分を供給する資材。人間や動物の排泄物を処理・安定化させたものも含まれる。
G
Greywater(グレーウォーター)
台所、洗濯、浴室などから発生する排水。トイレ由来のブラックウォーターを含まず、比較的汚染度が低い。
H
Handwashing(手洗い)
排泄後や食事前に手を洗う行為。病原体感染を防ぐ基本的な衛生習慣である。
I
Infiltration(浸透)
処理水を土壌に浸透させる処分方法。地下水汚染リスクがあるため、適切な設計と立地が重要。
J
Jokaso(浄化槽)
日本などで普及している分散型の処理施設。生活排水を処理し、水質を改善して放流する。
K
Kaolin(カオリン)
白色の粘土鉱物。トイレの建材や封じ込み資材として利用される場合がある。
L
Latrine(ラトリン、簡易トイレ)
土に穴を掘って利用する簡易トイレ。費用が安く普及しているが、地下水汚染や衛生リスクがある。
M
Manure(家畜ふん尿)
家畜からの排泄物。堆肥化やバイオガス生成に利用できるが、病原体管理が必要。
Microbial Risk(微生物リスク)
病原体による健康リスク。糞口感染や水系感染症を引き起こす要因となる。
詳細情報
📂 関連する機能グループ
- 収集・貯留・処理
- 集中処理・準集中処理
- 利用・処分
N
Nitrogen(窒素)
排泄物や排水に含まれる主要な栄養素。過剰放出は富栄養化を引き起こすが、肥料としては有用。
O
Operation and Maintenance(運転・維持管理)
サニテーション技術の機能を持続させるための日常的な運転と定期的な保守作業。利用者教育や費用負担も含む。
詳細情報
📂 関連する機能グループ
- 収集・貯留・処理
- 搬送
- 集中処理・準集中処理
- 利用・処分
P
Pathogen(病原体)
糞便や排水中に存在するウイルス、細菌、寄生虫など。サニテーションの主要なリスク因子。
詳細情報
📂 関連する機能グループ
- 収集・貯留・処理
- 搬送
- 集中処理・準集中処理
- 利用・処分
Pit Humus(槽内腐植土 )
ピットトイレで長期間貯留され、部分的に安定化した有機物。コンポスト化槽で生成される堆肥より分解が不十分な場合が多い。
Phosphorus(リン)
尿や糞便に含まれる栄養素。作物にとって必須だが、過剰に排出されると水域の富栄養化を招く。
Q
Quality Standards(水質基準)
処理水や排水の放流に関する法的基準。公共の健康や環境を守るための規制。
詳細情報
📂 関連する機能グループ
- 集中処理・準集中処理
- 利用・処分
R
Reuse(再利用)
処理済みの排泄物や排水を肥料、灌漑水、エネルギー源として利用すること。循環型資源管理の一部。
S
Sanitation(サニテーション)
人間の健康と環境を守るために、排泄物の収集・処理・再利用を体系的に行う仕組み。トイレから処理・利用までを含む。
詳細情報
📂 関連する機能グループ
- ユーザーインターフェース
- 収集・貯留・処理
- 搬送
- 集中処理・準集中処理
- 利用・処分
Septage(浄化槽汚泥)
浄化槽に貯留・堆積した排泄物や汚泥の混合物。定期的な除去と処理が必要。
Sludge(汚泥)
排水やトイレから集められた固形分を多く含む濃縮物。病原体や有機物を含むため適切な処理が必要。
詳細情報
📂 関連する機能グループ
- 収集・貯留・処理
- 集中処理・準集中処理
- 利用・処分
🛠️ 関連システム
T
Treatment(処理)
排泄物や排水の病原体除去・安定化・栄養分回収を目的とした一連の技術。好気性処理、嫌気性処理、乾燥などを含む。
U
Urine(尿)
排泄物の液体部分で、窒素やリンなどの栄養素を多く含む。肥料としての利用価値が高い。
Urine Diversion(尿分離)
尿と糞便を分離して収集する技術。栄養分の回収や衛生リスク低減に役立つ。
V
Ventilation(換気)
トイレや貯留施設内の空気を循環させ、臭気や害虫の発生を抑える技術。換気管や通気孔が用いられる。
W
Wastewater(排水)
家庭、商業、産業活動から生じる水。トイレ、台所、洗濯などすべてを含む総称。
Waterborne Disease(水系感染症)
汚染された水を介して伝播する感染症。コレラ、赤痢、腸チフスなどが含まれる。
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📂 関連する機能グループ
- 収集・貯留・処理
- 集中処理・準集中処理
X
Xerophilic Organisms(好乾性微生物)
乾燥した環境で生育できる微生物。乾燥処理の安定化に関与する。
詳細情報
📂 関連する機能グループ
- 利用・処分
Y
Yield of Biomass(バイオマス収量)
処理プロセスや栄養分利用から得られるバイオマスの生産量。飼料や燃料としての利用可能性を示す。
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📂 関連する機能グループ
- 利用・処分
Z
Zeolite(ゼオライト)
多孔質鉱物で、アンモニアや重金属を吸着する性質を持つ。尿や排水の処理に利用される。