T.9 垂直流人工湿地(Vertical Flow Constructed Wetland)

垂直流人工湿地(VF CW)の実例写真です。上部から散布された汚水が、砂利や砂の層を重力に従って垂直に浸透する過程で、空気を取り込みながら効率的に浄化される様子を描いています。写真では砂利の表面に等間隔に植栽された植物の並びを確認できます。 準集中処理・集中処理

概要

垂直流人工湿地(VF CW)は、植物を植えたろ過層に廃水を垂直に通す浄化技術です水平流型(T.8)とは異なり、ろ過層内を好気的な状態に保てるのが大きな特徴です。 その理由は、汚水を間欠的に散布することで、空気が層内に引き込まれるからです。

仕組み

まず、ろ過層の表面に汚水を1日に4〜10回、時間を空けて散布します。 散布された水が下へ流れる際、新鮮な空気がメディアの隙間に吸い込まれます。 次に、微生物が豊富な酸素を利用して、有機物を効率よく分解・処理します。 さらに、植物の根に生息する微生物が、窒素などの栄養塩を高度に除去します。 最後に、浄化された水は底部の排水管に集められ、外部へと排出されます。

入力と出力

適用条件

垂直流人工湿地は、高い浄化水質を求める場合に非常に優れた選択肢となります。

  • 前処理の必要性: 目詰まりはよく起こる問題です。 そのため、事前に浄化槽などで沈殿処理を行う必要があります。
  • 気候: 温暖な気候に適していますが、適切な設計で寒冷地でも運用可能です。
  • 専門性: 機械的な散布システムを維持するため、専門の管理スタッフが必要です。
  • 敷地面積: 1人あたり1〜3平方メートルと、他の人工湿地より省スペースです。

適用可能なシステム

長所と短所

長所

  • BOD、浮遊物質、病原体の削減効果が非常に高い。
  • 酸素供給が良いため、アンモニアを硝化する能力に優れている。
  • 水面が露出しないため、蚊の発生リスクを最小限に抑えられる。
  • 他の人工湿地技術と比較して、必要な敷地面積が少なくて済む。

短所

  • 均一に散布するための装置に、専門的な設計と施工が必要である。
  • 散布システムを動かすために、安定した電力供給が求められる。
  • 水平流型よりも、散布パイプの清掃など維持管理の手間が多い。
  • システムがフル稼働できるまで、立ち上げに長い期間を要する。

設計・運用上のポイント

設計のポイント: ろ過層は、下部に排水用の砂利、上部に砂の層を重ねて構築します。 面積の目安は、1人あたり1〜3平方メートル程度と、比較的小規模で済みます。 また、ろ過層内に酸素を供給するための通気管を設置することが推奨されます。

運用・維持管理(O&M)のポイント: 散布パイプの中にバイオフィルムが詰まらないよう、年1回は洗浄を行います。 あわせて、湿地植物が定着するまでは、雑草の除去などの細かな管理が必要です。 定期的に散布を休止させる期間を設けると、ろ過層の透水性が回復しやすくなります。

まとめ

垂直流人工湿地は、高い浄化能力と省スペースを両立させた持続可能な浄化技術です。 特に、窒素成分の除去が求められる厳しい放流基準の地域で、その真価を発揮します。 ただし、機械的な散布システムの維持が必要なため、専門的な運用体制を整えましょう。

引用

アイキャッチ画像の出典: Sustainable Sanitation Alliance (SuSanA) Secretariat
/ CC BY 2.0

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