T.17 バイオガスリアクター(Biogas Reactor)

インドネシアのバンダアチェにある浄化槽汚泥処理場のバイオガスリアクター。リアクターは設備に内蔵されており、発生したガスは設備上部にあるガス取り出し口から取り出せるようになっている。 準集中処理・集中処理

概要

バイオガスリアクターは、酸素のない密閉された空間で汚泥や有機廃棄物を分解し、燃料となるガスと肥料となる消化液を生成する技術です。この装置は、廃棄物をエネルギー資源と農業資材の両方に変えることができるため、資源回収型の衛生システムにおいて重要な役割を果たします。

仕組み

気密性の高い槽内で、し尿や汚泥、あるいは生ゴミなどの生分解性廃棄物を嫌気性微生物が分解します。この分解プロセス(嫌気性消化)で発生したメタンや二酸化炭素などの混合ガスは「バイオガス」と呼ばれ、槽の上部に蓄積されます。また、処理後に残る液体状の「消化液」は有機物と栄養分を豊富に含んでおり、病原体も一部不活性化されています。

入力と出力

適用条件

  • 定期的かつ安定した原料(投入物)の供給が可能である
  • 家畜の糞尿や市場・家庭からの有機廃棄物が豊富にある地域で特に有効
  • 生成されたバイオガスや消化液を現地で利用する需要がある
  • 気温が15°Cを下回る地域ではガスの生成効率が著しく低下するため、温暖な気候が望ましい
  • 消化液が継続的に生成されるため、年間を通じて貯蔵や利用、あるいは搬出ができる体制が整っている

適用可能なシステム

長所と短所

長所

  • 調理や照明、発電に利用できる再生可能エネルギーを生成できる
  • 構造物の大部分を地下に建設できるため、必要な地上面積が小さい
  • 機械装置に頼らず運用できるため、電力を必要としない
  • 廃棄物に含まれる栄養分を保持し、高品質な肥料として再利用できる
  • 適切に設計・建設されれば耐用年数が長い

短所

  • 専門的な設計と、熟練した技術者による建設が必要である
  • 病原体の除去が不完全であるため、用途によっては消化液の追加処理が必要になる
  • 15°C以下の環境下ではバイオガスの生成量が制限される

設計・運用上のポイント

設計のポイント:リアクターにはレンガ造りのドーム型や既製品のタンク型があります。そして、地下または地上に設置されます。ガスの圧力で消化液を拡張槽へ押し出す「固定ドーム型」や、ガスの量に応じてドームが上下する「浮動ドーム型」などの形式があります。水理学的滞留時間(HRT)は、熱帯気候では15日、温帯気候では25日以上確保することが推奨されます。

運用・維持管理のポイント:運転開始時には、嫌気性細菌を定着させるために牛糞や浄化槽汚泥などを投入する「接種」が行われます。投入する有機廃棄物は分解を助けるために細かく砕き、水や消化液と混ぜてから供給されます。腐食やガス漏れを防ぐため、配管や器具は定期的に清掃・点検され、槽の底に溜まった砂などの堆積物は5〜10年ごとに除去されます。

まとめ

バイオガスリアクターは、排泄物や廃棄物を処理するだけでなく、エネルギーと肥料に変えるサステイナブルな技術です。特に家畜を飼育している農村部や、生ゴミが大量に出る都市近郊において、環境負荷の低減と自給自足の促進を両立させる有力な手段となります。

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