概要
脱水糞便は、水分(尿)を含まない状態で貯蔵され、砕けやすく粗い粉末状になった糞便です。炭素と栄養分を豊富に含んでおり、農業において土壌改良剤として利用することができます。コンポスト化とは異なり、有機物の分解や変換ではなく、水分の除去(脱水)に重点を置いた技術です。

仕組み
糞便から水分が蒸発したり、添加された乾燥材(灰、おがくず、石灰など)に吸収されたりすることで脱水が進みます。脱水によって糞便の体積は約75%減少しますが、有機物はほとんど分解されずに残ります。病原体の不活性化は、温度、pH(灰や石灰による上昇)、および貯蔵期間に依存します。一般的には6ヶ月から24ヶ月の貯留が必要とされています。
入力と出力
適用条件
- 痩せた土壌の構造改善や、保水能力の向上を目指す場合に適している
- コンポストほど土壌改良効果は高くないが、病原体伝播のリスクを抑えつつ土壌を補充できる
- 施用に対する社会的受容性が得られる地域である必要がある
適用可能なシステム
長所と短所
長所
- 土壌の構造と保水力を改善できる
- 適切に処理されれば、病原体伝播のリスクが低い
- 導入や維持に要する費用が非常に安い
短所
- 施用作業には多大な肉体的労力が伴う
- 一部の原虫が休眠状態で生存し、水分が加わると感染力を取り戻すリスクがある
- 化学肥料(N, P, K)の完全な代替にはならない
- 地域によっては社会的受容性が低い
設計・運用上のポイント
設計のポイント: 貯蔵期間の選定が重要です。平均気温が2〜20°Cの地域では1.5〜2年、20°C以上の地域では回虫卵を不活性化するために1年以上の貯蔵が推奨されます。ただし、灰や石灰を加えてpHを9以上に保つ場合は、6ヶ月の貯蔵で施用が可能になります。
運用・維持管理のポイント: 施用時は、粉末を吸い込まないよう保護服やマスクを着用して作業を行います。また、安全のため、収穫の少なくとも1ヶ月前までには施用を完了させる必要があります。これは特に生食される作物において重要です。もし誤って水分や尿が混入した場合は、乾燥状態を保つために追加の灰や土を投入します。
まとめ
脱水糞便の施用は、排泄物を安全に隔離・乾燥させ、土壌の質を向上させる資源として再利用する低コストな技術です。化学肥料を補完し、土壌の健康を維持するための有効な手段となりますが、病原体の完全な不活性化には厳格な貯蔵期間の管理と、取り扱い時の安全確保が不可欠です。


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